クマザサとネザサの比率に基づく気候変動の研究


 地球規模の温暖化、寒冷化という気候変動が天体としての地球の運動に関係しているという考えが、ミランコヴィッチサイクルと気候変動の関係を論ずる基盤にある。たしかに、有孔虫化石の酸素同位体比の変動から推定される表面海水温度の変動は、ミランコヴィッチサイクルでよく説明出来るように思われる。表層海水温度の変動はプランクトンの発生量や種の変化にも影響するから、海底堆積物の研究から、気候変動の情報が得られて来た。しかし、陸上では海底のような連続的な堆積物が存在しないので、ミランコヴィッチサイクルの追跡は大変困難である。早田が宮城県北西部の佐沼丘陵の第四紀層の解析に際して行った、この地方に生えるクマザサとネザサの比率の時代に伴う変化の研究は、陸上でミランコヴィッチサイクルを捕らえようとした試みとして、注目にあたるものと思う。
 イネ科の植物の葉には、プラントオパールと呼ばれる一種のガラスが含まれる。ススキの葉で指を切った痛い経験を持つ人もいると思うが、このガラスが葉の縁に並んで目の細かいノコギリのようになっているからである。ササは毎年葉を落すし、また50年に一度ほど花をつけたあと枯れるので、地表付近の土壌の中にはササの葉に含まれていたプラントオパールが含まれることになる。
 この地方には現在、クマザサとネザサが分布している。一般にクマザサは寒冷な地域に分布し、ネザサは温暖な地域に分布する。クマザサとネザサのプラントオパールの形は見分けることができるので、ある時代の土壌に含まれるプラントオパールを調べれば、クマザサが多かったかネザサが多かったかしることができる。早田はプラントオパール全体に占めるネザサのプラントオパールの割り合いをネザサ率と定義し、そのへんかを図に示した。
 「高森遺跡」の(捏造)旧石器はtm-1と名付けられたテフラの直下から出た。このテフラは各種の年代測定の結果からおよそ50万年前のものと結論されている。そこで、早田は海底堆積物で研究された酸素同位体比の変動を比較のために載せている。図を見ると、酸素同位体比の変動(つまり気候変動)とネザサ率の変動はかなりよくあっているように見受けられる。