分子進化と分子時計


 DNAは4種類のの塩基(G:グアニン、C:シトシン、A:アデニン、T:チミン)から構成されている。塩基3個の並びがアミノ酸を指定する。
 この塩基の並びはある一定の確率で他の塩基に置き換わる。塩基が一つ変わっても出来て来るアミノ酸が変化しないような場合(例えば、UAUもUACもチロシンを指定する)には、このような置き換えが起きても生物体には影響がない。しかし、塩基の置き換えによってアミノ酸の指定が変わってしまったり、塩基が抜けることによってDNAの暗号自体の順序が乱されてしまうような場合には、生物は大きな影響を受け、多くの場合生存出来なくなる。従って、生物が生きてゆくのに基本的な機能を担う遺伝子は変化しにくく、生きてゆく上にあまり大きな役目を追っていない機能の遺伝子ほど変化が大きい。特に偽遺伝子(かつては遺伝子として機能していたが、いつの時点からかDNAの重複複製の結果スペアという性格になり、実際の遺伝子の機能を失ってしまった遺伝子)は置き替りのスピードが大きい。
 塩基の置き換わりはランダム現象であるから、平均して数百万年に一回程度の確率で起こる。例えば、サメは進化系統の幹から一番早く外れた。そこで、サメと、他の生物の間には81個程度の塩基の不一致が見られることになる。次にコイが外れる。コイと進化の幹に残った生物との間の塩基の不一致は70程度になる。このように、不一致の程度が大きくなればなるほど、古い時代に分岐したということになる。

 

 これを進化の分子時計と呼ぶが、この時計がどのくらい正確かという点については議論が続いている。ヘモグロビンのアルファ鎖に見るように数億年に渡って速度がほぼ一定と見られるとの報告もなされているが、本当に生命の歴史を通じてほぼ一定の速さであったのか、進化速度が速い時には置き替りの速度も速くなったのか、必ずしもはっきり分かっているわけではない。このような分子時計の問題点を理解して議論することが必要である。




 Link: 国立遺伝学研究所の「分子進化の中立説」に対する解説。



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