β線計測と加速器質量分析の比較
β線計測
現在の大気中の炭素1グラムを集めると1分間当たり約14個のベータ粒子が崩壊によって放出される。炭素1グラムを炭酸ガスにすると約2リットル(22.4/12)になる。つまり、2リットル弱の炭酸ガスを1時間計ると測定効率100%として800個ほどのベータ粒子が観測出来ることになる。計測数をNとすると誤差は√Nになるので、1%の誤差にするためには計測数を10000以上にしなければならない。測定器の効率は100とはならないし、古い試料では14Cの原子数が減って1分間に出て来るβ線の数は14よりずっと少なくなるから、測定に1週間かかることもまれではない。計測数をあげるために炭酸ガスを入れる容器を大きくし、数気圧の圧力で封じ込めるという方法がとられる。
液体シンチレーションカウンターを利用する場合には、試料はベンゼンにする。ベンゼン(C6H6)は1.1グラムで炭素を1グラム含む。また液体なので、量としては少ない。しかし、測定時間は炭酸ガスの場合と変わらない。
質量分析
加速器質量分析(AMS)では、14Cの原子数を計ることになる。半減期5730年であるから崩壊定数は2.33×10-10 (1/min)。1分間に13.6個の崩壊をするために必要な14Cの原子数をNとするとNとすると、N = (13.6/2.33)×1010個となる。炭素1グラムには600億個もの14Cの原子が含まれているのである。現在の技術であれば1ミリグラム程度の炭素があれば質量分析は可能である。また測定にかかる時間も30分から1時間程度である。
現在、加速器質量分析を用いた14C年代測定が盛んになっている。測定に必要な試料の量が劇的に減少したことは、従来測定が不可能であった試料の年代測定を可能にした。次のような試料がその例である。
- 古文書や文化財:測定に1グラム必要であれば、切り取ったり破壊したりすることになり測定は無理であるが、1ミリグラムなら可能な場合が多い。
- コラーゲン:骨の中に残されている少量のコラーゲンでも加速器質量分析なら測定可能である。
化石骨の中のコラーゲンを測定することにより、化石の年代が直接に測定出来るようになった。
- 穀物の粒:両があれば従来の方法でも測定可能であったが、最近は壺の中に残された極少量の穀物の粒でも測定可能になった。
こうしてみる加速器質量分析はすべての面で優れているように見えるが、問題になる点もある。
- 装置が高価でサイズも大きいこと。
- 装置の維持、操作に高い技術を要すること。
- 試料作成に高度な技術を要すること。
必要な試料の量が従来に比べて2桁ないし3桁少なくなったというのは、測定の精度が上がったということだけではなく、試料の幅が大きく拡がったことを意味する。
少し極端な言い方かも知れないが、14C年代測定法の性格自体が変わったとまで言っていいのではないかと思う。
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