フィッション・トラック年代測定法


 238Uはα崩壊するほかに、ごくわずかであるが自発核分裂を行う。ウランの原子核がほぼ質量の等しい2つの部分に分裂し、反対方向に大きなエネルギーを持って飛び出すのである。中性子などの微小粒子もいくつか同時に飛び出す。これらの粒子の運動エネルギーは、238U原子核の静止質量と分裂の結果生じたすべての粒子、原子核の合計の静止質量の差によって与えられる。(この質量差をアインシュタインの変換式[E=mC2]に従ってエネルギーに換えたものである。)
 ウラン含有鉱物を考えると、核分裂のエネルギーは大きいので、分裂によって出来た原子核は、鉱物の中を破壊しながら進むことになる。破壊された部分は肉眼では見えない極細い傷(トラック)になる。鉱物を研摩した後、薬品で研摩面をエッチングすると顕微鏡で見えるくらいに傷跡になる。238U原子核が1つ分裂すると1っ本のトラックが生じるので、トラックの本数と、238Uの自発核分裂に関する崩壊定数と、238Uの原子数を与えれば、年代が得られる。
 試料に含まれる238Uの量を求めるには、試料を原子炉に入れ、中性子を照射する。中性子照射によって238Uは影響を受けないが、235Uは誘導核分裂を起こす。試料の研摩面に雲母の薄膜や特殊なフィルムを貼っておくと、誘導核分裂で生じるトラックを検知することができる。(核分裂物質は試料の中から研摩面を通って外に飛び出フィルムにもトラックができる。)

鉱物(またはガラス)に含まれる238U (図で丸い粒子として示してある)は自発核分裂を行い、その結果、時間が経つに連れて、傷跡(トラック)が増えてゆく。この図では、将来の研摩面を楕円で示し、鉱物の下半分にあるトラックの部分を太く示した。星印は235Uである。235Uは研摩面の上方の鉱物内にも存在するが、年代測定には影響を与えないので省略してある。
 鉱物を上下に切り分け、下の部分の切断面を研摩した。将来この面をエッチングしてトラックをかぞえる。しかし、まず、研摩面に誘導核分裂によるトラックを検知出来るフィルム(または雲母の薄層)を貼付けて原子炉の中で中性子を照射する。238Uは影響を受けないが、235Uは誘導核分裂する。この核分裂による傷跡(トラック)は、鉱物内から研摩面を横切って検知フィルムにも痕を残す。
 研摩面をエッチングすると、238Uの自発核分裂によるトラックと235Uの誘導核分裂によるトラックの両方があらわれる。一方検知フィルムには235U誘導核分裂によるトラックのみがあらわれる。誘導核分裂によるトラック数からは鉱物内のウランの量が分る。238Uの自発核分裂によって生じたトラック数と比較すると、フィッショントラック年代が求められる。


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