ウランはアルファ崩壊、ベータ崩壊を繰り返して、安定な鉛の同位体になる。この間、トリウム、ラジウム、ラドンなど科学的な性質の異なる核種を経過する。崩壊系列の途中の核種の半減期は一般に短いが、
この2つの特徴を利用したのがイオニウム(Io: 230Thのこと)年代測定法である。
河川は陸上の岩石を浸食し、その成分を海に運んで来る。この中に、ウランとトリウムも含まれている。
ウラニルイオン(UO2)2+は海水に溶け、海水中に長時間滞留する。平均滞留時間は約50万年である。
トリウムは海水に溶けず、約300年の平均滞留時間で海底に沈澱する。従って、海底堆積物表層部にはトリウムが多く含まれることになる。
陸上の岩石に含まれるウランは放射系列の途中の核種で半減期がもっとも長い234Uでも半減期は25万年を切るのであるから、地質年代にくらべればほぼ一瞬のうちに放射平衡に達している。つまり、238Uの崩壊で単位時間に生じる234Uの原子数と234Uの崩壊で単位時間に生じる230Thの原子数は等しく、また230Thの崩壊で単位時間に生じる226Raの原子数も等しい。大本の供給源である238Uの半減期は45億年と桁違いに長いので、短期間では238Uから単位時間に供給される原子の数は変化しない。230Thが放射崩壊で減る分は234Uの崩壊によって補われ、234Uが崩壊によって減少する分は、238Uの崩壊によって補われる。
ところが、海底堆積物に関しては、上に述べたように、230Thの供給源である234Uおよび大本の供給源である238Uが海水中に長期間滞在するため、海底堆積物中にお沈澱した230Thは供給源を失うことになる。
測定に際しては、230Thと232Thの放射能の比を測る。この2つは同位体なので、化学的には同じ行動をする。海水中におけるこれら2つの同位体の比が変わらなければ、海底に沈殿した時点での比も同じである。時間が経つに連れて230Thの放射能は減少するが、232Thの放射能は減少しない(半減期140億年!)。比で測定する利点は、同位体比の方が230Thの絶対量より変動の影響を受ける程度が少ないためである。(何かの原因で230Thの沈殿量が5%減ったとしても、232Thの沈殿量も5%減ると期待できる。)
説明を簡単にするために、堆積物にUは全く含まれないとしよう。この場合、堆積物中の230Thは半減期7.5万年で減少して行くことになる。海底堆積物の表面にはいつの時代でも同じ濃度の230Thが含まれるとしよう。もし、1メートルの深さの堆積物中の230Thの濃度が50%になっているならば、7.5万年前に堆積した堆積物と考えられる。このようにして、堆積速度を見積もることが可能になる。