高森遺跡を含む宮城県北西部の第四紀層の年代決定には古地磁気測定が大きな貢献をした。
地磁気は現在の同じように磁針のN極が北を指す正磁極期と現在とは逆方向、つまりN極が南を指す逆磁極期がある。これらの磁極期は短くても10万年長ければ100万年程度の期間続く。
これに対して、もっと短時間しか継続しないイヴェントといわれる期間がある。これは、磁極期の中にあらわれるその磁極期とは逆方向の磁極配置を持つ時期である。現在のブルンヌ(Brunhes)正磁極期の中にはブレーク(Brake)・イヴェントやビワ(Biwa)・イヴェントが存在する。これらのイヴェントは短時間しか存在しないので、完全な連続記録のとれない火山の溶岩では確認が難しいものが多く、もっぱら、海底堆積物のコアや湖底堆積物のコア(ビワ・イヴェントは琵琶湖堆積物の研究によって発見された。)の研究によって同定されている。これらのイヴェントは勿論全世界に同時に起こっているから、確認出来れば、時間面として利用できる。


1993年富山大学の広岡らにより、高森のテフラの中の2枚が逆帯磁していることが報告されている。それまでの年代権球の結果を勘案して、高森のテフラの最も若い年代でも30万年よりは古く、最も古いテフラでも50万年よりは古いと仮定して、Tm-16の逆帯磁を38万年前のBIWA IIIイヴェントに、Tm-1の示す逆帯磁を今から46から49万年前のEmperer イヴェントに対比させた。
1995年の報告では、高森遺跡付近では、高森遺跡より下位の地層である湯浜火砕流堆積物が現在と逆方向に磁化していることが確認できた。この逆磁化は松山逆磁期のものと考えられるので、湯浜火砕流は今から73万年よりは前に堆積したものと考えられるようになった。この層の上位に逆帯磁しているテフラが6枚発見された。海底堆積物などの研究により30万年前から73万年前までの間に確認されている短期のイヴェントはDelta (63万年前)、Big Lost(56万年前)、Emperer(46から49万年前)、Biwa III(38万年前)の4つである。高森遺跡付近の古地磁気研究により、これまでまで知られていなかった2つの短期イヴェントが発見されたことになる。対比は一意的には決まらないが、最も若く見積ってもTm-1 は46から49万年前、最も古く見積ると63万年前ということになる。
| 問題点も指摘しておこう。テフラは陸上の火山噴火による火山性降下物であるから、海底堆積物と違って完全な連続記録ではない。たまたま火山噴火があった時に短期反転のイヴェントがあった時だけテフラに記録されることになる。高森ではTm-1からTm-16までのテフラが10万年ないし20万年の間に堆積したことになる。平均して1万年ないし1万5000年に一回の堆積である。短期イヴェントの継続時間が1万年程度あればすべてのイヴェントを記録していてもおかしくないが、イヴェントの継続期間が短いなら、記録もれもある可能性がある。これまで知られていないイヴェントが2つ発見されたとされているが、実際にはもっとあって、記録されていなかった可能性もある。 |