ほとんどの溶岩は冷える時に、その時、その場所の地磁気の方向に磁化することが知られている。
しかし、溶岩の残留敷を測定してみると、現在の地磁気の方向とほぼ反対の方向に磁気を帯びているものがあることは、古くから知られていた。
これは、その地点の磁気がなにかの原因で乱れた局地的な現象として説明されてきた。
京都大学の松山基範は1929年に、日本、朝鮮、満州等から採取し溶岩試料について、第三紀の溶岩は現在の地球磁場と逆向きに帯磁していると報告した。
松山は「地球磁場そのものが逆方向を向いていたため」と説明したが、ほとんど反響はなかった。地球磁場がどうして発生するかも分かっていないのに、磁場が逆転するかしないかなどという議論は出来なかったのである。
地球磁場の逆転が再び大きな話題になったのは、岩石の磁気が盛んにはかられるようになった1950年代になってからである。世界各地から現在の地球磁場と反対方向に帯磁した溶岩があることが報告された。岩石の残留磁化の測定は初めは無定位磁力計で、1960年代になるとスピナー磁力計で、そして超電導現象が発見されるとそれを応用した超電導磁力計(SQUID)で測定された。
地球磁場の逆転史を研究するには、世界の遠く離れた場所で採取された溶岩がいつ噴出したのかを決めなければならない。溶岩の年代は主にK-Ar年代測定法によって測られるが、溶岩に含まれる微量のArを精度よく測定するには、高性能の質量分析装置が必要であった。また、Arは大気中に窒素、酸素についで3番目に多く含まれる元素であるから、質量分析装置は大気に由来するArの影響を受けないようにしなければならない。カリフォルニア大学物理教室のRaynolds教授がパイレックスがラスで作った質量分析装置は、まさに溶岩の年代を測るために登場した感があった。
世界各地の溶岩の残留磁化と年代は、サンフランシスコ近郊のメンローパークにあるアメリカ合衆国地質調査所のCox(岩石磁気測定)とDarlymple(年代測定)のグループとレイノルズ型質量分析計をいち早く取り入れたMacDougalを中心としたオーストラリア国立大学のグループによって精力的に研究され、1960年代末までに450万年前までの地磁気逆転史が完成した。ここに示した図は、20世紀の年代研究の成果を反映した最新のものである。
(写真:パイレックス製質量分析計を完成させたレイノルズ博士)